農業共済新聞記事バックナンバー

農業共済新聞10月1週号

100年続くぶどう液を再生 町の活性化の一助に

山元町 田所食品(株)

【山元町】「奇跡が重なり、会社を再建することができた。100年続くぶどう液を守り続けたい」と話す、山元町の田所食品株式会社代表取締役の田所林一さん(69)。東日本大震災で甚大な津波被害を受けたが、家族や従業員は無事避難、ぶどう原液が一部奇跡的に回収できたことをばねに営業の再起を図り、町の復興の一助に努めている。

同社は1918(大正7)年創業以来、自社産ブドウを用いた果汁100パーセントぶどう液の製造・販売を手掛けている。田所さんは「山元町の沿岸部は砂地で水はけが良く、かつてはブドウの一大産地だった。先代はこの栽培したブドウを搾汁して保存することにより、年間を通して製造を可能とし、ブドウ本来の味わいを生かしたぶどう液造りを始めた」ときっかけを話す。
しかし、東日本大震災による津波で加工場や隣接する自宅、ブドウ園もすべて流失する被害を受けてしまう。
田所さんは、一度は営業の断念を考えたものの、家族や従業員の命が無事であったことや、奇跡的にがれきの中からブドウの原液(3万6千リットル)が回収できたことで再起を決意。知人の加工場で原液を瓶詰めしてもらい、2011(平成23)年7月に震災後初のぶどう液を出荷することができた。
田所さんは「原液が一部回収でき、息子も後継者として頑張っている。山元町に100年続くぶどう液の歴史を守りたいと強く思うことが支えとなった」と話す。
現在、畑1.6ヘクタールを造成し、内陸部に果汁加工施設を整備。ブドウを自社栽培する一方、秋田県や岩手県の生産者とも契約を結んでぶどう液を製造。うま味とこくを出すため、温度・湿度が管理された貯蔵庫で2~3年熟成させてから出荷している。
被災地の産業復興の一助にも努め、町内の特産品加工、製造の受け皿として期待されている。加工施設ではブドウに加え、町内産イチゴやリンゴ、トマトの加工にも積極的だ。
震災後初めてぶどう液を飲んだという名取市の30代女性は「濃厚だがさっぱりしていて飲みやすい。健康にも良いみたいなので、友達にも紹介したい」と話す。
田所さんは「最近、生食用のブドウ『シャインマスカット』を栽培し始めた。当社の隣に観光農園と直売所建設を計画し、町の復興のために貢献していきたい」と力強く話す。

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